「花と奥たん (1)」 高橋 しん

花と奥たん 1 (ビッグコミックススペシャル)

花と奥たん (1)
高橋 しん / 小学館 (2009/4/30)


評価:★★★★★(満点!!)


たとえ今日で世界が終わっちゃうとしても


本当高橋先生はウマイなーと思う。
その“ウマイ”は絵が上手とかそういう意味の事ではなくて
なんと言うか、読者を引き込む何か。
そして読者の予想をまんまと裏切る何か。
本当にね読んでいていっつも「やられた!」って思うの。
そして「くそう!」って思う。なんだか悔しいのよね、
今回もしてやられました。まさか、こんな物語だなんて思いもしなかった。


東京の近郊、横浜のはずれの住宅街にある一軒家。
手の行き届いた家庭菜園には立派な野菜が沢山実っている。
それが“奥たん”のお城。
今日も野菜を収穫しながら、晩ごはんの献立に思いを巡らせる奥たん。
最愛の旦那様に喜んでもらうためですもの、はりきりますよ!!

花と奥たん(1)

さて今日はどんな献立にしようかな。


高橋先生特有の柔らかい線で描かれた奥たんと飼いウサギのPたんは
キラキラで、ふわふわで、ニッコニコ。
平凡かもしれないけれど、幸せいっぱいだ(なんてったって新婚だしね!)。

しかし、読み進めるうちに、私達は小さな違和感に気付くのです。
スーパーに買出しに出掛けた奥たんの後ろ。
何気なく描かれた街の景色に。井戸端会議をしている主婦達の会話に。
「あれ?」と思う。
ハッキリと分からないけれど、でも明らかにオカシイと思う。
何?何だ?何だ?何だ?と読み進め、そして気付かされる。
“そこ”は現実とはほんの少し違う事が起きている世界だと言う事。
“花”と呼ばれる災厄によって、東京が突然壊滅した世界だと言う事。
奥たんは“帰りの遅い”旦那様の事を、今でもずっと待っていると言う事・・・。


感じとしては『最終兵器彼女』に近いでしょうか。
リアルな現代の日本が舞台のようでいて、非現実的な何かが起きている世界。
普通の学園モノだとか恋愛モノだとか、ほのぼのな内容だと思って読んでいると
ギョッとさせられる設定。
そのギョッとさが、また魅力なのですよ。

さらに言うと、登場する景色は、高橋先生が実際に歩き回って
写真に収めてきたものを利用しているとのことで、どこまでもリアル。
そういう、本当の景色の中に溶けこむように非現実さがあるから
異常さがより一層際立って感じられるのでしょうな。

花と奥たん(1)

自分の住んでる地域が登場したら良いな〜。
はっ!!うちはまんまと“花”の下か。む、無念・・・。


そうそう。
それらの写真は物語の最後に「冒険レポ」としてオマケ紹介されているのですが
景色だけでなく、各話に登場するお料理も実際に作ってみているそうで
冒険レポと共にレシピも掲載されているのです。
で、それがオマケにしておくには勿体無いほど面白くて!!

というのも、ウサギのPちゃんが解説者なものだから
材料の名前を知らなかったり(「しょっぱい白い粉」とか「バルサミなんだか」とか)
ウサギだけに魚料理には興味がないからって解説が投げ槍だったり。
でも投げ槍でもちゃんとレシピとして使える程度の投げ槍さなのがまたおかしくて。
これは必見。オススメ。


あ、そうだ、料理つながりで
各話の頭には毎回奥たんがこしらえる晩ゴハンがカラーで描かれるのですが
それがまたすっっっごく美味しそうなんですよ!!

花と奥たん(1)

どうですか、この料理漫画ばりの料理描写!!
ああもう、見ているだけでお腹がな鳴っちゃうよ!!

・・・ん?ちょっと待てよ?
よく考えたらこの作品って、料理漫画ばりじゃなくて、正真正銘の料理漫画か?
そうだよな、料理がメインのお話だもんな。


そう、本作品は“花”という、世紀末的な要素と謎を抱えているわけなのですけど
でも“花”がメインではなくて、あくまで“そういう災厄のあった世界”で生活をする
奥たんの日常風景。買出しに出掛けた時のちょっとした冒険や
料理をする姿がメインの物語なのです。
その“花”があくまでオマケなのがまたいい。

あ、でもだからと言って、謎を謎のままにしておくわけではないのですよ。
東京の現状やその災厄についての内容は
ほんの少しずつ語られて、ほんの少しずつ見えてきている。
そのちょっとずつさがまた絶妙で。
って、なんか大絶賛だな私!!


ああもうっ!!
正直な事を言うと、私はこれまでの高橋先生の作品を
手放しで感動できていないというか
自分でも良く分からないのですけど
なぜか斜に構えた見方しか出来ないでいたのです。
でもこの作品は、本当そんな私にもグッときて。

なので、そんなアンチ気味な私でも面白いと思えたくらいですから
皆さまにも是非読んでみて欲しいと思うのです。

自分の周りだけかもしれないですが
あまり話題になっていないように感じるこの作品。
もっと話題になってもいいと思うの。
皆気付け!!これ面白いよー!!

本当、お勧めですっ!!


最後に。
雑誌連載の間隔が月間どころか季刊?くらいなペースらしく
すぐに続きが読めません・・・イケズ!!
そんなわけで、続々とコミックが出ない事と
あとカラーページが多いためか、通常のコミックよりも少々値が張る事がネックかな。

花と奥たん(1)

(こんな感じで巻頭だけでなくて各所にカラーが用いられてるのです)
でもこのカラー群も魅力のひとつなので減っちゃイヤ!!

先生、続き本当に楽しみにしていますので、頑張ってくださいねー!!


作品詳細


花と奥たん 1 (ビッグコミックススペシャル)
小学館
発売日:2009-04-30
おすすめ度:4.5
おすすめ度5 食べて生きる
おすすめ度4 世界の終わりがきても、食べることが生きる希望。
おすすめ度4 今日も一日かけて、立派な夕ごはんが出来ました。
おすすめ度5 終末と日常


価格:¥780
B6判 248ページ

2009年5月5日初版第1版発行

【目次】
第1話 タラのワイン蒸しミニトマトソース005
第2話 カボチャとゴーヤーのスパイス煮053
第3話 梅干しとごはん101
第4話 ヒジキづくしごはん149
第5話 手間たっぷりのちらし寿司195

【掲載】
週刊ビッグコミックスピリッツ '08年第2号、第21号、第33号、第50号、'09年第16号
posted by 麻吉 at 2009/08/15 20:20 | Comment(1) | TrackBack(0) | COMIC | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コンビニだったかな?暇だったんでちょっと立ち読みでもしようかとたまたま手に取った漫画雑誌にこれが載ってて一発でファンになりました。
脱走兵さんを奥たんが拾う回でした。
背景はすごく残酷なのに奥たんの周りだけがすごくきれいにみえて、現実の主婦でもここまでするひと殆どいないんじゃないかってくらい、素朴なんだけど手の込んだ料理を幸せそうに食材と会話しながら丁寧に作る奥たんを見てると、帰ってこないであろう旦那たんの事を思い出して読者のこっちが泣けてくる・・。
複雑だけどいい作品だとおもいます。
あれを読むと料理したくなるのは私だけでしょうか?w
普通の料理漫画だと読んだあとは美味しいものが食べたくなる。
でもこの漫画を読むと美味しいものを作りたくなるんです。
コミックさがしてるんですが大きな書店いかなきゃだめかしら。
人気ありそうだから在庫ないかもなー。
頑張って探してみます^^
Posted by ヨシエ at 2010年03月12日 22:35
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