「湘南人肉医」 大石 圭

湘南人肉医 (角川ホラー文庫)

湘南人肉医
大石 圭 / 角川書店(2003/11)


評価:★★☆☆☆


人間の頭が茹であがるには1時間かかる


整形外科医として働く小鳥田優児は、神の手を持つと言われるほどの名医。
名声も財産も手に入れた彼だが、しかし幼い頃から満たされない感覚があった。
それは、食べても食べても襲われる猛烈な“飢餓感”。
ある日その飢餓感を満たす方法を彼は発見する。
痩身で訪れた女性患者の臀部から取り出した脂肪。
それを口にした時、彼はこの上ないエクスタシーと共に飢餓感が満たされたのだ。
この満足感を知ってしまった彼は、もう後戻り出来なかった・・・。


死人を恋う』や『飼育する男』に比べたら、とても面白く読めました。
あの最後の展開などはかなり好き。
しかしこーやっぱり、微妙だなーと思う部分が多々あった。


内容はスリリングなはずなのに、緊張もドキドキもしなかったのがまず1つ。
過去読んだ2作品にも感じたことなのですが
3作品目にして、なんとなく理由が見えてきましたよ。
それは・・・

大石氏の世界は、警察があまりにも働かなさ過ぎだからだよー!!

そう、どんな事しても捕まる気配が無いんだよ。
結構無茶な事してるのに、警察の“け”の字の気配もない。
今作では一応刑事が登場するにはするのだけれど全然アレだし。
作品内のニュースで警察は監視カメラに映った車100台強の映像を
全部調べるみたいなこと言ってたけど
物凄く目立つ黄色のボルボがカメラに映ってたはずなのに
結局警察来なかったし・・・

目立つと言えば、主人公の外見が地味で特徴の無いならばまだしも
身長180cmオーバーな上に130kgを超える巨漢で
更に一部の世界では知らない人はいないと言われるような有名人で。
そんな人間が、こそこそするわけでもなく
下手したら店員の印象に残るような事をして女性を口説いて
(例えば「あちらのお客様からです」と標的の女性にお酒をプレゼントするとか)
さらに自宅マンションの受付嬢に女性と部屋に上がるところを平気で見られてて
そんなのが何回もあって、でも逮捕されないって・・・

そりゃ警察無能過ぎでしょう!!
いや、警察を馬鹿にし過ぎでしょう大石先生!!

飼育する男』のあとがきで
自分の中の実現不可能な願望を小説として形にしてる的な事を書いていたので
警察に捕まるなんて考えたくないのかもしれないですけど
でも、何しても捕まんない世界じゃ、背徳でもなんでもないし
それじゃ緊迫感がなくて、つまんないって私は思うのだけどな。うーむ。


あと他に今作で気になった事は
食人や殺人の目的が、後半に向けてうやむやになっているように感じた事。

人の肉を食べる事が目的で、人を殺したいわけじゃない、仕方が無く。だったはずが
お金目的のあの女子高生にした事などは
むしろ殺人の行為自体を楽しんでるふしがあったと思うの。
あの展開だけ凄く違和感があった。
全ての女性を同じように仕留めていたら単調になってしまうから
少々特殊な手法を入れたのかもしれないけれど
でも、この作品の、あの主人公の思想とは合わない気がしてならなかったのですよ。
この作品ではない、別の作品で使えば良かったのにーって。

そう。そうそう。
なんかね、何て言うのかな。
その女子高生の殺害方法の事もそうなのだけれど
ストーリーの展開とか、設定とかを考え抜いて書いたのではなくて
お、これもいいんじゃないか?あれもこれもって
書いてる途中途中で思いついた事をそのまま入れちゃったみたいな
勿体無いから、とりあえず全部入れちゃえみたいな、そんな感じが全体的にしました。
子供の頃の特殊な思い出話とか特に。
そんなにいっぱいエピソード必要ないでしょって。
色々ありすぎて、逆にまとまりがなくなってた。
上手く分けたら、2〜3作品作れたのじゃないかしらって思うほど。
勿体無い。


あと、最後に微妙に思った要素をもう1つ。
前に読んだ2作品も同様
主人公の男達は必ず神奈川の海沿いの高級マンションや豪邸に住んでいて
お金持ちで優雅な生活を送っているの。
神奈川生まれ神奈川育ちで、三浦海岸も平塚も身近なものとして知っている私は
それらの景色を現実に知らない人よりも、よりリアルに物語を感じられるはずなのに
その変な高級感に違和感を感じたというか
それのせいで共感がもてないと言うか、何かシラケるというか・・・。
って、それってただの貧乏人のひがみじゃないか!?
そ、そうかもゴメン!!


うむ。
とまーそんなわけで批判ばかり書いてしまいましたけれど
でも始めに書いたように、あのラストは好きだし
スズランあたりのエピソードはお気に入りだし。
あとなぜか、主人公と病院スタッフとの軽快なやりとりが好きでした。
ってそれ本筋とあんまり関係ない(笑)。

あと、各章のタイトルと、各章の始めにある
過去に人間が人間を食した様々な歴史についての記述が
「へー」と思えてしまう内容で良かったです。
って、やっぱりそれ本筋と関係ない。

ちなみに各章のタイトルはこんな感じ。

第1章 人間の頭が茹であがるには1時間かかる
第2章 女性の体の中では上腕二頭筋がいちばんうまい
第3章 生き血は冷やしたほうが飲みやすい
第4章 人の肉は少し古いほうが味がいい
第5章 胎児は骨まで柔らかい
最終章 クリトリスの味は個体差が大きい

ね?思わず「へー」って思っちゃうでしょ?え?思わない?


実録書は別として、小説でカニバリズムを主題としたものを
他に読んだ事がないので(確か)比べる事は難しいですが
サスペンス的なものとか、驚愕の展開とか
あと意外にもグロテスクさと言いますか、スプラッター要素?もあまりないので
そういうモノを期待して読むと肩透かしを喰らう可能性があります。が。
ただただ“食人”に興味がある。という人にはお勧めできる・・・かなぁ・・・。
とりあえず登場する料理は、どれもとても美味しそうでしたよ。はっはっはっは。


☆関連記事☆
・「死人を恋う」 大石圭
・「飼育する男」 大石 圭

作品詳細


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価格:¥580
文庫判 302ページ

平成15年11月10日初版発行

※書き下ろし
posted by 麻吉 at 2009/09/05 14:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | BOOK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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