「北神伝綺 (上)(下)」 森美夏/大塚英志

北神伝綺 (上) (ニュータイプ100%コミックス) 北神伝綺 (下) (ニュータイプ100%コミックス)

北神伝綺 (上)(下)
森 美夏 大塚 英志 / 角川書店 (1997/12)


評価:★★★★☆


大塚・森ペアによる『偽史三部作』の一作目。

本作の狂言回しは民族研究家・柳田國男。
木島日記』版狂言回し折口信夫先生のお師匠さんですね。

『木島日記』と本作は、同じ時代である事と軍絡みの内容から
人物が少々交錯する部分もありますが
基本的にはまったく関係の無い物語です。
組織とか出てこないし。

内容も似ているようで少々違います。
こちらの主人公・兵頭北神も
「あってはならないモノを葬る」事をしているのですが
『木島日記』が数多くの不思議を仕分けているのに対して
『北神伝綺』は山人という1つの不思議に対してのみ。


山人とは
遠い昔、現在の日本人の起源である大和民族よりも前に
日本列島に住み着いていたとされる先住民族の事。
それは民俗学者である柳田が唱えた説のひとつ。

もしこれが現代の日本で発表されたなら「へー」てなもので
「トリビア」に取り上げられて終わってしまいそうですけれど
当時は天皇が現人神と崇められ、絶対の存在であった時代。
大戦を目前に控え、軍もその思想を守らなくてはならなかった時代。
そんな時代に日本はミカドの物では無かったと。
先住民族を追い出して、占領した国なのだと。
そんな思想はあってはならなかった。

そして軍による「山人狩り」が・・・。


全編通して山人と係わったとされる
その時代の著名人たちの物語が語られます。
柳田國男、宮沢賢治、竹久夢二、伊藤晴雨、甘粕正彦、出口王仁三郎
北一輝、ゼムス・チャーチワード、江戸川乱歩・・・

もちろん全てはフィクションであるのですが
例えば誰もが眼にした事があるであろう竹久夢二の美人画「黒船屋」と
伊藤晴雨の淫靡な責め絵のモデルが同一人物の山人の女で
そしてそこに霧社事件が絡まって・・・なんて
この真実と架空の入り混じり具合は、本当にさすがの一言。

これらの事件や人物については
知識が無くとも作中で語られるので問題はありません。
もちろん詳細を知っていた方が面白いと思いますが。
皆さんご存知の江戸川乱歩なんて
ナイスキャラになっていましたよ。ふふふ。


本作はとりあえず上下巻で完結です。
しかし主要の登場人物についての詳細はほとんど語られることが無く
その点が非常に残念です。
お滝ちゃんの台詞ではないですけれど
正直、北神が柳田に対して、ここまで盲目的に従う気持ちが分からない。
もしかしたら現在連載中の『小説 北神伝綺』で判明するかもですが。
あ、でもそれを言ったら
木島が折口先生に付き纏う理由も不明か。しまった。


そうそう『木島日記』といえば。
本作にはちょろっと木島と根津と折口先生が出てきます。
顔や性格はかなり違う感じではありますが。
だって“あの”根津が、ちゃんと本屋さんの仕事手伝ってるんだもの(笑)。

本作での根津と北神では断然北神の方が戦闘能力は上でしたが
『木島日記』版の人類三大タブーから解放された
超人であるところの根津であったならば
結構良い線いったのではないかな。なんて思ってみたり。
贔屓目で見過ぎですかね。ふっふふふ。


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posted by 麻吉 at 2006/06/27 22:08 | Comment(0) | TrackBack(1) | COMIC | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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昨日のブログに投稿したにも書きましたが、小林信彦氏の「回想の江戸川乱歩」に松本清張が“「江戸川乱歩は、登場して数年で死んでいたら、すごい天才、ということになっていたろうなあ」というようなことを公然..
飾釦 | 2006-06-29 00:06
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