「マンホール 全3巻」 筒井哲也

マンホール 3 (3) (ヤングガンガンコミックス)

マンホール 全3巻
筒井 哲也 / スクウェア・エニックス (2005/08/25)


評価:★★★☆☆


惜しい。実に惜しい。


その男の出現は、その後起こる恐怖の序章に過ぎなかった・・・。

男は平和な商店街の片隅にあるマンホールから這い出してきた。
スキンヘッド、全裸、泥だらけの手足、そして明らかに異常をきたした形相。
全てが不可解なその男が死に、その死体から謎の寄生虫が発見される。
男の謎、マンホールの謎、寄生虫の謎。謎。謎。謎。
事件を追う刑事らを嘲笑うかのように、恐怖は確実に広がりつつあった・・・。


題材、絵柄、表現力、どれもとっても上質。素晴らしいの一言。
しかし、本作を読む前に似た題材を用いた作品
外薗昌也著『エマージング』を読んでいて
更にその作品を読んだ時に感じた「勿体無さ」を
この作品でも同じ様に感じてしまったのでした。


『エマージング』はエボラ出血熱に良く似た症状の患者が
新宿のど真ん中で血を撒き散らすように死に
その場に居合わせた者が次々と・・・といった内容。

その緊迫感は凄まじく。
続きが気になり、雑誌の発売を心待ちにするほどした。
しかし、話はこれからもっと盛り上がりを見せる・・・と思われた矢先
あまりにも呆気無く未知なる病原菌との戦いは解決。終焉。
正直唖然としました。そして残念でならなかった。
『マンホール』にも、それとまったく同じ感想を持ちました。


これだけの要素を持って
もっと大事になってもおかしくない状況まで用意したにも係わらず
それをまったく活用する事無く事態が収束されていった事。

もっと絶望的な状況になってもおかしくなかったはずです。
絶望と呼ぶに相応しいほどに増えた感染媒体がいて
それらが活動しうる時間は十二分にあった。
それだけの量と時間がありながら、あれだけの被害で済むはずがない。
いや、実際問題は別として、そこからもっと話は膨らんでも良かったはず。
でなければ“あんな状況”にまでした意味がない。

同じアパートの人間。キャッチボールをしていた親子。
画面には登場していなくとも、あれだけの密集した民家があり。
そして目の前の道を通り過ぎた人間など数え切れないほどいたでしょう。
もしかしたら自転車で走り去った者がいて、警戒範囲外まで移動したかもしれない。
そんな更なる広がりがあったら、もっともっと面白くなったのに。


あと残念に思った事は、登場人物の心情があまり伝わって来なかった事。
残念ながら、どの人物にも共感する事が出来なかった。

それぞれの被害者たちについてもそうだし、主役の二人。
特に一番重要である刑事・井上菜緒の心情の変化さえも
上手く描ききれていなかったように思えてなりません。
確かに一刻を争う事件内容で、そんなのんびりする時間などなかったわけだけれど
その部分はこの作品で重要な要素であったはずで
もっとページを割いて、丁寧に描いても良かったと思う。

少しでもその辺りの事を描けていたら
被害者や主人公に対して「助かって欲しい!!」とか「頑張れ!!」とか
もっと心の底から感じて、熱くなれたように思います。


もう少しの緊張感と絶望感の継続。そして登場人物たちの心理描写。
そんなものを加えて、全5巻くらいのボリュームの作品になっていたら
名作と言っても過言ではない。物凄い話題作になっていたのではないだろうか。
それが本作を読んで感じた素直な感想です。
本当に勿体無い。そうとしか言いようがありません。


あああと、少々余談ではありますが
突然登場したスーパーハッカーの某彼。
他作品の人物が客演的に登場するのは、ファンにとっては嬉しい事ですけども
キャラクターの雰囲気と内容とが微妙に合ってなかったと申しましょうか
あの場面だけ少々浮いていました・・・よね?

ああ言うのは、あんな風に大々的に登場させるんじゃなくて
もう少し普通な感じと言うか地味な感じで
よーく見たら「喜多嶋じゃん!!」位の方がこう発見した時の喜びが強く・・・ねぇ?
って、めちゃくちゃ個人的な好みの問題ですね。


うーむ。なんだかマイナス点ばかり挙げてしまいましたが
これは「もっと面白くなったはずなのに!!」とか
「もっと読みたかったのに!!」いう気持ちからであって
断じて面白くなかった訳ではないのですよ!!

迫り来る時間との戦い。秘められた謎の解明。

そしてなんと言っても描写力。症状のグロテスクさなどはもう絶品!!
個人的には、媒体の苗床となった少女のあたりの話は
その身体の状態といい、部屋の惨事といい、うおおおーという感じ。
寄生虫に侵された被害者達よりも、格段にインパクトがあって。
あれは凄い。そしてあの状態には心底なりたくない。1箇所でも辛いのに。うおお。

あと2巻と3巻の表紙と、表紙を取った内側のイラストがたまらん好きです。
この血管が透けた色の悪さ・・・最高だ・・・。


寄生虫、血、傷、死体描写は極めて緻密。
ゆえにそういった要素が苦手な方にはお薦めし辛くはありますが
しかし謎を解明して行くサスペンスモノがお好きでしたら・・・。
グロテスク好きさんは文句無く。一見の価値ありデス!!
あの少女の悲惨な姿・・・ぜひその目で確かめてあげて下さい・・・ふっふふふ。


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posted by 麻吉 at 2007/03/22 23:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | COMIC | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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