「オーデュボンの祈り」 伊坂幸太郎

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

オーデュボンの祈り
伊坂 幸太郎 / 新潮社 (2000/12、文庫2003/11)


評価:★★★★★(満点!!)


読後こんな幸福感に包まれる小説を私は他に知らない。


目を覚ますと、そこは見知らぬ島だった。
地図にも載っていない、150年もの間外部と交流を絶っている島“荻島”。

そこには少々風変わりな人々が生活をしていた。
反対の言葉しか口にしない画家。
身動きが取れないほど太り、同じ場所に座り続けている女性。
いつも道に寝そべり、地面に耳を押し当てている少女。
秩序として人を殺す事を許されている男。
そして未来を予知し、人語を操る事の出来る“カカシ”・・・。

ある夜、島で殺人事件が発生する。
カカシの優午が何者かにバラバラにされ、頭部を持ち去られたのだ。
犯人はいったい誰なのか?その目的は?
そして、未来を知る優午はなぜ、自らの危機を回避出来なかったのか・・・?


ああ、本当に素敵な作品でした。

謎が明らかになるにつれ、満ちてくるこの幸福感。
事件の首謀者の心理や動機が明らかになった時も
関係性など無いと思われていた事柄が徐々に収束していった時も
感じたのは「驚き」よりも「温かさ」で。
そして、最後の最後
彼の本当の“気持ち”が明かされた時の何とも言えない微笑ましさ。

笑える小説も、泣ける小説も、驚愕のラストが訪れる小説も
名作と思える作品は今まで色々読んできましたけれど
でもこんなに優しい余韻に浸る事が出来た作品は初めてです。


さてそんな気分になれたのには
物語の良さはもちろん、と言いますか8割方は物語のお陰なのですけど
登場人物が皆素敵なところも理由の一つではないかと。

皆風変わりなのだけど、とっても魅力的なんですもの。
本当、みーんな素敵で、みーんな好き(あ、城山と曽根川と以外ね)
そんな中で、あえて1人選ぶとするならば、そうだな「ウサギ」さんが1番好きかな。
どこがどう良かったのか聞かれると難しいのですけど
なんだか、彼女の店先でお話をしてみたいなーって凄く思ったんだ〜。

次点はゴールデンレトリバー似の「日比野」くん。
あ、侍っぽい雰囲気の警察官「小山田」も捨て難・・・
と言いますか、色々勘違いされやすい日比野をそっと見守ってる小山田。
って感じにこうね・・・ってゴメンナサイ!!でもだってさー!!

そう言えば「城山」は、折角濃ゆい設定のキャラクターだったのに
それほど活躍(?)する事も無く退場してしまったのが
この作品で唯一残念に思った事かも知れないです。
いや彼の事は好きじゃないですけど!!
でももっと物語に入り込んで来ても良かったかなと。うーん勿体無い。

そうそうそう言えば、城山も含め
結構美形揃いなんですよね登場人物!!特に男性陣がね!!ニシシ


あとこれは「幸福感」とは別で
私がとても良いなと思った部分の話なのですが。
こんなヘンテコな人々がいる、見知らぬ世界に迷い込んだ主人公。
ってまるで「不思議の国のアリス」みたいな“非現実的”な設定なのに
実はとても“現実的”なお話だってとこ。

“しゃべるカカシ”が登場する時点で
現実的ではないだろうと、言われてしまうかも知れませんが
これがまた、カカシである優午がしゃべったり考えたり出来るのも
“魔法”だとか、そんな事ではないんです。
もちろんカカシと言っておいて、実は人間とかロボット。なんて事でもない。
優午は木を十字に縛って頭部分が白い布で出来た、れっきとしたカカシ。
でも彼が話せるのに“科学的根拠”がそこにはあるのです。

まあ、それと同じ構造で作ったら本当にしゃべるかと言われたら
100%無理なのですけどね。
でもそういう“理屈”があるだけで、物語に“現実味”が帯びてくる。

この島が独特な発展をする事になった理由も同様。
実在する有名な人物が絡んでいたりして
だから、有り得ないけれど、でももしかしたら・・・と思わせてくれる。
ファンタジーではない。そう言うなれば、これは「偽史」。


そんなわけなので、私同様“偽史”好きさんに強くオススメしたい!!
それと、ばら撒かれた謎が最後に綺麗に収束する系の作品がお好きな方も是非!!

あと「幸せ」を連呼したので、始終ふわふわと幸せに満ちた物語が
展開するのかと思われてしまわれたかも知れませんが
実は胸糞が悪くなるような残虐行為の表現があったりするので、一応注意が必要です。
まあ大丈夫な範囲だとは思いますが。グロテスクではないのでね。


本当、とてもとても素敵な作品。
心からもっと沢山の方に読んでもらいたいなと思います。
ほんの少しでも興味を持たれた方は是非お手にとってみて下さい。
オススメです!!


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posted by 麻吉 at 2007/10/26 02:42 | Comment(6) | TrackBack(0) | BOOK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
き、気になる。
すごく気になる感想!

ほんとに、感想文がうまいですよねー。
チェックします!

ちなみにわたしは、我孫子さんの新刊文庫の「生首に聞いてみろ」とかいうのが気になってます。
Posted by 馨 at 2007年10月29日 12:45
U >馨様
U わーい!!気になって頂けましたか?
U 我孫子氏の作品と比べると薄口かもですが、本当面白かったので是非是非。
U わ、「生首に聞いてみろ」ってタイトルからして面白そう!!私もチェックしなくちゃだわ!!
Posted by 麻吉@管理人 at 2007年10月30日 03:20
お久しぶりです!
私もこの作家の作品が大好きで全部そろえてますw
私的には日比野くんが好きです。笑

本当、幸福な余韻ですよね〜。

あ、この作家の「重力ピエロ」はかなりおすすめですよ!ものっすごく登場人物がかっこよくて、
一言でいうならスタイリッシュミステリーって感じですww

それでは。更新楽しみにしています。
Posted by 一輪 at 2008年01月25日 18:40
U >一輪様
U こんにちは!!伊坂作品全部お持ちなのですか?凄い!!
U 「オーデュボン」で一目惚れしてからというもの私も全て集める気満々なのですが
U 古本屋さんになかなか出て来ないんですよね〜。文庫普通に買おうかな。
U 「重力ピエロ」早速メモ致しましたー!!探してみますね!!うー楽しみ!!
Posted by 麻吉@管理人 at 2008年02月04日 01:49
この本絶対に買ってみます!!
私、偽史とか大好きなので(^^)

私はついこの前このサイトに辿りついたのですが、
さっそくお気に入りに追加です♪
率直な感想が書かれていて、
とても本が選びやすいです!!
本屋さんとかのサイトの感想は
全部ポジティブなもので、
読んだ後にガッカリするパターンが
多いんですよね・・・
Posted by aaa at 2009年07月19日 21:45
  私も伊坂さん大好きです(`∀´)
  結構読みました♪♪
  「ウサギ」さんいいですよね^^
  私も好きです!
 
  他の作品で好きなのは…マリアビートル❤
  檸檬&蜜柑がやばいんです!

  あ!「オーデュボン」今読んでます。
  もう最後で目が離せませんw
Posted by ハル at 2011年02月04日 19:11
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