「ちひろ」 安田弘之

ちひろ 1 (1)

ちひろ
安田 弘之 / 講談社 (2001/9、文庫2007/6)


評価:★★★★☆


あたし壊れてる?そう、よかった、でなきゃあなたを愛せないもの。


ちひろはファッションヘルス「ぷちブル」で働く風俗嬢。
長い黒髪、吸い込まれそうな黒い瞳。魅力的な笑顔。無邪気な性格。
容姿や性格はもちろん、その技術力で、指名数は常にナンバーワンだ。
仕事にも職場にも不満は無い。充実した日々。
しかし彼女は幸せに浸っている事が出来なかった。
自ら幸せを壊し、痛みを感じる事で己の心を確認するちひろ。

「痛い? 悔しい? ううん おもしろい。」


安田先生と言えば『ショムニ』を代表とする
“風刺を利かせたギャグ漫画”のイメージが強くあると思いますが
その印象のまま本作を読むと、軽く衝撃を受けるかもしれません。

これは痛くて、悲しくて、切ない物語だ。

いや、完全なシリアス漫画ではないんですよ。
いつも通りのドタバタ感はあるし
「こういう人いるいる!!」というオカシさもある。
あと風俗豆知識的な、へーと思える情報もあるし。
もちろんしっかり、バッチリ“エロ”満載。

そうそう風俗が舞台だからと言って、それが辛さの原因ではないんです。
むしろ「羨ましい」とすら思えてしまうほどの仕事環境。
そして彼女の賢さも、聡明さも、明るさも、自由奔放な“生き様”も
とても魅力的で、羨ましい。と思えていた。のだけど・・・

何度か読み返している内に、少し感想が変わってきました。
今は彼女を羨ましいとは思わない。むしろ可哀想で仕方が無い。
だって、実際生きていく上で「楽」で「幸せ」なのは
彼女とは真逆の、世の中の色々な事に鈍感な「はるか」みたいな子だもの。


なーんてね。
ちひろを「可哀想」扱いするなんて、お前何様だって感じですね。ごもっとも。
それにそんな事を言う私をきっと彼女は
笑顔を浮かべたまま、かつてのOL仲間を見るような眼差しで見ることでしょう。
でもね、そんな態度をとられようとも、読むたび“ちひろ”に言ってあげたくなるんだよ。
「あんたはバカだよ」って。それで頭をガシガシとしてやりたくなる。
もちろんちひろはそんな言葉、全然望んでいないだろうけど。


読む人によって、もしくは読んだ時の自分の状態によっても
彼女に対する感じ方は違ってくると思います。
切なく思う人もいれば、憧れる人も、元気をもらえる人もいると思う。
それに男と女でも、まったく違った感想になる事でしょう。

だから読んだ誰もが同じ気持ちになれるような
ハッキリと明確な答えのある作品がお好きな方には向かないかもしれない。
けれど、この不思議な余韻を、「ちひろ」という不思議な女性の物語を
多くの人に読んで貰いたいなと思います。

貴方はこの自由奔放な女性をどのように受け止めるだろうか。

お勧め致します。是非。


そうそう余談ですが。
私が所有している上記表紙画像の版はすでに絶版で
しかし最近、復刻版が文庫上下巻の形で発売されたそうな。
何か追加なり改定なりされているのかしら。
気になるわね。ちょっと探して中身覗いてこようかな。


[ amazon詳細 : 文庫『ちひろ (上)』 / 文庫『ちひろ (下)』 ]



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posted by 麻吉 at 2007/11/16 04:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | COMIC | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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